01 / 読書ガイド
読書ガイド
マクロ経済モデル:乗数の前に方程式を閉じる
無料の問題志向教材と二つの中級ルートを比べ、独自の支出・税・債務例で恒等式、行動仮定、ストックとフローを区別します。
学習順路・例題の編集責任:University Reading List編集プロジェクト。
引用
Mankiw, N. G. (2025). Macroeconomics (12th ed.). Worth Publishers / Macmillan Learning.
章の要約
第12版は22章とエピローグからなり、時間軸に沿って五つの部に分かれる。長期、超長期、短期、そして理論と政策の発展的話題である。第11版と比べると、国民所得の内容は2章に、貨幣制度も2章に分かれたため、第2章以降の章番号は以前の版と異なる。
第I部、第1–2章:マクロ経済学の科学/マクロ経済学のデータ
導入では、マクロ経済学が何を扱うか、経済学者がどのようにモデルを作るかを述べ、続いて経済を描写するためのデータを扱う。この2章が全体で使う語彙を与える。
第II部、第3–8章:国民所得:その稼ぎ方/国民所得:その使い方/貨幣制度への最初の視点/インフレーション:原因、影響、社会的費用/開放経済/失業と労働市場
古典派の長期の部。前の版では国民所得が1章だったが、第12版では所得がどのように稼がれるかと、どのように使われるかを分けている。貨幣は第5章で早めに登場し、その後にインフレ、開放経済、失業が続く。出版社によれば、自然失業率を説明するための労働力の動学モデルが改善されている。
第III部、第9–11章:成長の源泉としての資本蓄積/人口増加と技術進歩/成長の実証分析と政策
成長理論の部で、出版社は超長期の経済と説明している。資本蓄積から人口増加・技術進歩へと進み、実証的証拠と政策で終わる。
第IV部、第12–16章:経済変動入門/総需要I:IS–LMモデルの構築/総需要II:IS–LMモデルの応用/開放経済再論:マンデル=フレミング・モデルと為替レート制度/総供給とインフレ・失業の短期的トレードオフ
短期の景気循環理論。経済変動の概観から出発し、IS–LMモデルを2章で扱い、マンデル=フレミング・モデルで開放経済に拡張し、最後に総供給とインフレ・失業のトレードオフを論じる。
第V部、第17–22章とエピローグ:経済変動の動学モデル/安定化政策をめぐる別の見方/政府債務と財政赤字/銀行と金融政策/金融システム:機会と危険/消費と投資のミクロ的基礎/私たちが知っていること、知らないこと
最終部は、経済変動の動学モデル、安定化政策と財政赤字をめぐる議論、銀行と金融政策の章での貨幣制度の二度目の本格的な扱い、金融システム、そして消費と投資の行動的基礎をまとめる。エピローグ「私たちが知っていること、知らないこと」が本書を締めくくる。
主要概念
第I–II部:データと長期
- 国民所得:所得として稼がれる産出(第3章)と、支出される産出(第4章)。
- 貨幣制度とインフレ:第5章での貨幣への最初の視点と、第6章でのインフレの原因と社会的費用。
- 自然失業率:失業率が落ち着く水準で、第8章で労働力の動学を通じて説明される。
第III部:成長
- 資本蓄積:貯蓄と投資が労働者一人当たりの産出をどう高めるか。
- 技術進歩と人口増加:第10章で扱う長期成長の他の源泉。
第IV部:短期の変動
- IS–LMモデル:総需要の分析枠組みで、第13章で構築し第14章で応用する。
- マンデル=フレミング・モデル:開放経済版で、為替レート制度の選択も扱う。
- 総供給と短期のトレードオフ:第16章で扱うインフレと失業の関係。
第V部:政策と基礎
- 経済変動の動学モデル:産出とインフレが時間とともにどう動くかのモデル(第17章)。
- 銀行と金融政策、金融システム:銀行、中央銀行、金融市場が経済をどう形づくるか(第20–21章)。
- ミクロ的基礎:消費と投資の背後にある家計と企業の行動(第22章)。
批判的分析
長所
- 時間軸による構成。 各部が異なる問いに答える。長期の産出は何で決まるか、成長は何に駆動されるか、短期の変動は何が起こすか。どのモデルがどの問題に対応するかが見える。
- 貨幣と金融の充実した扱い。 貨幣制度は前半で最初に触れられ、後に銀行と金融政策の章で深められ、さらに金融システムとその危険の章が続くため、貨幣が1章に閉じ込められない。
- 明快でモジュール的な構造。 章題は内容を示し、部にまとめられているので、動学モデルやミクロ的基礎などのまとまりを省いたり並べ替えたりしても主線は損なわれない。実際のコースでもそのように使われている。下記のUT Tylerのコース(第11版)は、導入、長期の各章、成長、景気循環で1学期を組み立て、後半のいくつかの章を省いている(「よくあるコースでの割り当て」を参照)。
- 版をまたいで使える。 同じUT Tylerのシラバスは第11版を挙げつつ、古い版でも構わないと学生に伝えている。これは、学生が章番号を確認し直すことを条件に、教員が以前の版を認められるほど中核の順序が安定していることを示唆する。
- 出版社が強調する明快さ。 Macmillan Learningは、本書を中級マクロ経済学コースの主要教科書とし、複雑な概念を際立った明快さで説明すると紹介している。これは出版社自身の記述であり、独立した評価ではない。
短所
- 版の照合。 このページの章名と時間範囲は2025年の第12版に基づいており、後年のDigital Updateやアクセス商品とは区別して考える必要がある。版の違いは実際に問題になる。下記のUT Tylerのコースのように最近の授業でもまだ第11版を指定していることがあり、第12版では国民所得と貨幣制度がそれぞれ2章に分かれたため、第11版の章番号は通常、第12版では別の章を指すことになる。
- 基礎が最後に来る。 需要の二つの構成要素である消費と投資は、それらが関わる短期モデルの後、最終章で扱われる。
- 一冊で多くの主題。 22章で成長、変動、政策、金融を概観するため、研究を目指す学生には大学院レベルの教科書が別に必要になる。
コースにおける位置づけ
マンキューのMacroeconomicsは、長期、成長、短期、そして政策という、中級コースの標準的な順序をとる(具体例は下記のUT Tylerのコースを参照)。Krugman and WellsのMacroeconomicsは物語と実際の出来事で考え方を説明する入門レベルの教科書であり、COREのThe Economy 2.0: Macroeconomicsは抽象的なモデルではなくデータと歴史的事例から出発する。マンキューの前に背景を補いたい学生は、どちらかを使うとよい。Carlin and SoskiceのMacroeconomics: Institutions, Instability, and Inequalityは産出・インフレ・中央銀行のルールを扱う三方程式モデルを軸に、金融、制度、不平等へ広げており、同じレベルの二冊目としてよい組み合わせになる。
RomerのAdvanced Macroeconomicsは大学院1年次への続編であり、Ljungqvist and SargentのRecursive Macroeconomic Theoryは現代の動学マクロ経済学の再帰的手法を教える。どちらも中級マクロ経済学を前提とする。
本書の使い方
対象は、原理のコースを終え、基本的な代数とグラフに慣れた学部生である。第II部の長期モデルが成長や短期の各章の基礎になるため、順番に読むのが前提である。
進め方の例:まず第I部で語彙とデータを押さえ、次に第II部で貨幣と開放経済を含む長期モデルを学ぶ。第III部は成長理論を加えるもので、短期を中心とするコースでは短縮できる。第IV部では経済変動入門を道しるべとして、IS–LMの2章を丁寧に読み、続いて開放経済と総供給の章に進む。第V部は選択的に使う。第19章と第21章は政策や金融を扱うコース向き、第17章は動学モデルを求めるコース向き、第22章はより高度な学習に進む学生向きである。各モデルは自分で問題を解いて練習し、文献表の章番号は本版と照合する。
よくあるコースでの割り当て
UT Tyler、ECON 3317 Intermediate Macroeconomic Analysis、2024年春学期:第11版。 シラバスはマンキューのMacroeconomics第11版(Macmillan Learning、ISBN 9781319263904)を必修ではなく推奨として挙げ、古い版でも構わないと記している。その授業計画は第11版の章番号で次のとおりである。
- 第1週:導入(第1章)
- 第2–6週:国民所得、インフレ、失業(第2、3、5、6、7章)
- 第7–11週:成長モデル(第8、9、10章)
- 第12–15週:景気循環と政策(第11、12、13、15章)
この順序は本書の時間軸による構成、すなわち長期、成長、短期の変動と政策という流れに従っている。景気循環に入る前に、長期と成長のまとまりにそれぞれ約5週を充てている。第12版を持っている場合は、番号ではなくトピックに沿って進めること。第1章と第2章を除き、この計画の第11版の章番号を第12版の章として読んではならない。国民所得と貨幣制度の内容が再編されているからである。各週を上に挙げた第12版の章名に対応させるか、問題演習がどの版を前提としているかを教員に確認すること。
版に関する注意
このページは第12版(2025年)を説明しているが、2024年のコースはまだ第11版を指定しており、さらに古い版を認めるコースもある。シラバスに沿って読み始める前に、どの版が指定されているかを確認すること。そのうえで、章番号に頼らず、手元の版の章名を確認すること。
版と書誌情報の出典
このページで扱うのはMankiwの2025年刊の第12版であり、後年のDigital Updateや形式別のアクセスパッケージとは区別される。第11版(ISBN 9781319263904)は別の版であり、第2章以降の章番号が異なる。
- 出版社の商品ページ:Macmillan Learning — Macroeconomics
- 著者の業績リスト:N. Gregory Mankiw(Harvard)
焦点を絞った読み方と練習
第12版では、国民所得は第3–4章、経済変動とIS–LMは第12–14章、政府債務は第19章で扱われる。各モデルについて、対象とする時間範囲と、何を固定し何を調整させてモデルを閉じているかを書き出して比較するとよい。財政の例題では、民間貯蓄・政府貯蓄と、ある時点の債務残高を分けて計算し、赤字(フロー)を債務残高(ストック)と呼ばないこと。電子版・アクセス商品や後年のDigital Updateを、この第12版の代わりとして扱わないこと。文献表が上記のUT Tylerのコースのように第11版向けに書かれている場合は、読み始める前にトピックごとに対応させて変換すること。